OLCグループは、2011年に国連人権理事会で承認された「ビジネスと人権に関する指導原則」(以下「指導原則」)に則し、「OLCグループ人権に関する基本方針」を改定し、「指導原則」に準拠したより実効的な人権尊重を進めることにしました。
なお、人権デューデリジェンスについては、既存の取り組みをベースに検討を進めています。
人権方針は、次のプロセスで議論し、策定しました。


人権方針改定案や今後の人権デューデリジェンスについてのダイアログを実施しました。
外部有識者:認定NPO法人 ヒューマンライツ・ナウ 事務局次長/弁護士 佐藤 暁子(Akiko Sato)氏
ファシリテーター:有限会社エコネットワークス代表取締役 野澤 健(Takeshi Nozawa)氏
主なご意見:
・社会に大きなインパクトを与える事業に取り組むOLCグループには人権尊重に対しても大きなインパクトを与えることを期待する
・人権方針は人権の視点を事業の基盤とする覚悟を経営が社内外に示す役割
・人権が侵害されやすいのは従業員であり、企業がまず取り組むのは従業員の人権尊重であることに疑いはない
・人権デューデリジェンスはライツホルダーの人権リスクを見つけ出すために行い、リスクが見つからないことこそがリスクである
・人権デューデリジェンスをいくらやっても人権リスクはなくならない、早くからリスクを見つけ、深刻化を防ぐ役割を持つ
・人権デューデリジェンスはデューデリジェンスから始める訳ではなく、既存の取り組みをどのように拡大できるかという視点もあわせて持ってほしい
OLCグループは、「OLCグループ人権に関する基本方針」に基づき、事業に関わるすべての人々の人権を尊重するために、ESGマテリアリティ「ダイバーシティ&インクルージョン」の枠組みで、取り組みを推進しています。ESGマテリアリティ「ダイバーシティ&インクルージョン」は、経営戦略本部長(取締役常務執行役員)が委員長を務める企業行動委員会で検討され、代表取締役社長執行役員を議長とした「サステナビリティ推進会議」において、取り組み内容における優先順位や資源配分等についての議論を深めた後、経営会議や取締役会に付議する体制としています。
なお、企業行動委員会では、持続可能に人権施策を推進していくための社内体制も検討しています。
企業行動委員会の傘下に、ダイバーシティ&インクルージョン分科会とサプライチェーン・マネジメント分科会を設置しており、それぞれ、顧客の多様性に関する事項と持続可能な調達に関する事項を検討・推進しています。
また、ESGマテリアリティごとに、目標、そして進捗状況を評価するための指標として、2030KGI、2026KPI、2024中期経営計画のKPIを設定しており、年1年回以上、取締役会および経営会議に進捗を報告しています。

当社グループでは、人権尊重に関するリスクと機会を踏まえ、次の通り、取り組みの方向性を策定しています。
【リスク】
・ダイバーシティへの対応不足による体験価値の低下
・人権尊重への対応不足によるリスクの顕在化
【機会】
・変容する社会や顧客ニーズへの対応による体験価値向上
変容する社会や顧客ニーズの変化に対応し、多様な価値観を尊重した事業活動を展開するために、ベースとなる人権尊重への体系的な取り組みや、既存製品・サービスの見直しと多様性に配慮するための仕組みの構築などの取り組みを実施。
OLCグループは、人権方針策定時に、以下の手順で重要人権課題を特定しています。

【重要人権課題】
・サプライチェーン上の人権課題
・環境・気候変動に関する人権問題
・ハラスメント
・労働安全衛生
・生活賃金・待遇格差
・差別(直接・間接)
・表現の自由
・ジェンダー(性的マイノリティ含)
・テクノロジー・AIに関する人権問題
・子どもの権利
・救済へアクセスする権利

OLCグループでは、国連「ビジネスを人権に関する指導原則」に基づき、人権デューデリジェンスとして、「1.人権への負の影響の特定、分析、評価」「2.人権への負の影響の防止・軽減」「3.対応の実効性の追跡評価」「4.外部への情報提供」を実施します。
これら一連のプロセスを通じて、ステークホルダー・エンゲージメントを図り、是正・救済を推進します。

「1.人権への負の影響の特定、分析、評価」にあたっては、重要人権課題を、従業員、取引先、顧客のフレームに分類し、それぞれ脆弱なステークホルダーを特定したうえで、ギャップ分析(アセスメントと予防是正に向けた検討)を進めています。そうすることで、特に脆弱なライツホルダーに対する取り組みが不足している点の洗い出しに注力しています。

2024年度までに、ギャップ分析と持続的に人権尊重を推進する体制の構築に取り組みます。
また、2024年度以降、ギャップ分析を踏まえ重要人権課題を見直し、2030年までの中期ロードマップの策定を行います。
なお、重要人権課題は、社会状況や人権デューデリジェンスの進捗状況を踏まえ、定期的に見直します。

3つの領域における主なギャップ分析の取り組み状況は以下の通りです。
領域 |
アセスメント/ 予防是正に向けた検討 |
課題/今後のアクション |
従業員 |
・「国連ビジネスと人権に関する指導原則」が示す苦情処理メカニズムの8要件を参照し、OLCグループ相談窓口の実効性評価実施 ・OLCグループ相談窓口に寄せられる相談件数と内容に関する調査実施と分析の実施 |
・脆弱な立場に置かれやすいライツホルダーの考慮など国際的な人権基準に則した相談窓口の対応 ・相談窓口の実効性向上への取り組み |
サプライチェーン |
サプライチェーン・マネジメント分科会において、高リスク品目の特定と対応方針を策定 ・人権に関するリスク品目のデスクトップ調査の実施 |
社内で特定した高リスク品目の新規項目の追加検討や管理方法の検討 |
顧客 |
・ダイバーシティ&インクルージョン分科会において、顧客に関する対応の優先順位を策定 ・性的マイノリティ当事者とのセッションにおいて、特に残念なこと、気になったこととして、ジェンダーを固定した対応などについての検討開始 |
・対応の優先順位に沿った投資計画の策定と取り組み内容の検討 ・相談窓口に寄せられた声から潜在的、あるいは顕在化した人権問題についての調査、対応方法の検討 |
当社グループの全社リスクは、「OLCグループリスク管理規程」に基づき個別リスクの予防・対応策を策定するリスクマネジメントサイクルを設定し、運用しています。当社の社長を委員長とする「リスクマネジメント委員会」にて、事業活動に係るリスク全般を抽出・識別・評価し、「戦略リスク」と「運営リスク」に区分したうえで、各統括組織が優先的に対応すべきリスクの絞り込みを実施しています。
サステナビリティ関連リスクを含む「戦略リスク」は、所管組織が予防策・対応策を策定・実行し、その対応状況を「戦略リスク」を統括する経営戦略部が確認しています。その確認結果は、経営戦略部が取りまとめ、年に1回、「経営会議」ならびに「取締役会」に報告を行い、「取締役会」の監督体制の下、当社グループの戦略に反映いたします。
なお、人権・多様性に関するリスクは、サステナビリティ関連リスクとして、「戦略リスク」に含まれています。
社内と社外に、当社グループにおけるハラスメント、情報管理等のコンプライアンスに関する相談通報窓口を設置しています。また、キャスト専用の相談窓口など雇用区分に応じた相談窓口やOLCグループ会社各社にも従業員相談窓口を設置するなど、従業員が相談しやすい体制を構築しています。
さらに、取引先との関係における当社グループ役職員のコンプライアンス違反およびその疑いを早期に発見する手段としてお取引先さま専用相談窓口を設置しています。
なお、相談通報窓口としての実効性を確保するため、相談者・通報者が匿名にて相談できるなど不利益を被ることがないよう社内規定で明記しています。
また、2023年度の相談受付件数は670件、相談内容は、人間関係・コミュニケーションに関する相談67%、人事制度・労働条件に関する相談20%、法令・ルール違反に関する相談9%、その他4%でした。
2023年度 |
||
相談受付件数 |
670件 |
|
相談内容 |
人間関係・コミュニケーションに関する相談 |
67% |
人事制度・労働条件に関する相談 |
20% |
|
法令・ルール違反に関する相談 |
9% |
|
その他 |
4% |
従業員が人権・多様性への理解を深めるために、社内報やイントラネットを通じて人権・多様性に関する情報を発信するなど、さまざまな社内教育を実施しています。
2023年度には、管理職や管理者に対して、コンプライアンスに関する教育とあわせて、「ビジネスと人権」に関する基礎知識を学ぶ人権教育を実施しました。
全従業員に対しては、2023年1月より、多様性に関する考え方や事例をまとめた「ダイバーシティ&インクルージョン ハンドブック」を配布し、多様性への理解を深める取り組みを行っています。
各組織からは、「業務の中で配慮すべき視点に気づくことができた」、「対話を通じて、異なる意見に触れることで理解が深まった」などの声が寄せられました。
【ダイバーシティ&インクルージョン ハンドブックの構成】
・ハンドブックの使い方
・無意識バイアスについて
・ステレオタイプについて
・大切なポイント
・障がい
・ジェンダー・性的マイノリティ
・子ども
・人種・国籍・言語文化
・信仰・信条
・事例集
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- ダイバーシティ&インクルージョン ハンドブック
パークオペレーション部門の従業員が受講する「ノーマライゼーション・クリエイター・クラス」では、ゲストとキャストの多様性を理解し、受容するマインドとスキルを学びます。
【ノーマライゼーション・クリエイター・クラスの構成】
・概念を理解する
・東京ディズニーリゾートのダイバーシティの取り組み
・シチュエーション体験
・パークで車イス体験
・ディスカッション
・まとめ
人権デューデリジェンスの一環として、企業が求められている要請を理解するため、外部有識者による「ビジネスと人権」に関する講演、ディスカッションを行いました。社内の人権に関わる部署を中心に約20名が参加し、ビジネスと人権に関するグローバルおよび日本国内における基礎知識と最新動向について学び、企業が影響を及ぼす人権問題について、国内外の事例を用いたディスカッションを行いました。
外部有識者:
有限会社エコネットワークス 代表取締役 野澤 健氏
Social Connection for Human Rights 共同創設者 土井 陽子氏
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- ディスカッションの様子
事業活動に関わりの深い、子どもの権利とビジネスに関する理解を深めるために、外部講師による講演「子どもの権利とビジネス 企業のステークホルダーとしての子どもを取り残さないために」を実施しました。
グローバルおよび日本国内における、子どもの権利に関する法令やガイドラインの基礎知識を学び、広告やマーケティングなどの企業活動が子どもの権利に及ぼす影響や、企業に求められる姿勢についての理解を深めました。また、講演後に講師と外部有識者によるパネルディスカッションを実施し、事業特性を踏まえた議論を行いました。
講演はオンラインで開催し、グループ会社従業員を含む約80名が参加しました。
外部有識者:
公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン アドボカシー部長 堀江 由美子氏
子どもの権利とビジネス 企業のステークホルダーとしての子どもを取り残さないために 講演資料
重要人権課題に関する知識を身に付けることで、脆弱なステークホルダーへの対応につなげるために、企業行動委員会傘下のダイバーシティ&インクルージョン分科会が主催し、性的マイノリティ当事者とのセッションを実施しました。セッションには約50名が参加し、当事者の困りごとなどを共有してもらうことで、多様な性のあり方についての理解を深めました。また、実際にテーマパークやホテルを体験した際に感じた嬉しかったこと、残念なことや気になったことを共有してもらい、特に残念なことや気になったことのうち、今後に向けてレストルームのあり方やジェンダーを特定しない呼び掛けなどについてディスカッションしました。
外部有識者:
一般社団法人LGBT-JAPAN 代表理事 田附 亮氏、東根 未悠氏
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- ディスカッションの様子
当社グループは、人権尊重を含む「ダイバーシティ&インクルージョン」を2030年までのESGマテリアリティに設定し、以下の指標・目標を設定しています。
KPI |
KGI |
|
2024中期経営計画 |
2026年度 |
2030年 |
・11の重要人権課題と「従業員」「サプライチェーン」 「顧客」の3つの領域でギャップ分析を実施し、脆弱なライツホルダーに対する取り組みが不足している点の洗い出しを行う ・持続的に人権施策を推進していくための社内体制を構築する ・既存施設・サービスのギャップ分析と対応計画の策定および実行 |
・重要な人権課題への人権デューデリジェンス実施のカバー範囲とカバー率 |
・特定した重要人権課題に対する人権デューデリジェンスプロセスの構築と運用 ・多様性を尊重した事業活動ができる仕組みの構築 |
- 管理職に「ビジネスと人権」を含むセミナーを実施
- 有識者と社員との人権デューデリジェンスに関するセッションを複数回実施
- 相談窓口(従業員・顧客・取引先)の実効性評価を実施
- 相談窓口に寄せられた声を分析し、是正・救済や予防的措置を講じるべき事案の洗い出しのうえ対応検討を開始
- 人権の観点(一部環境面も含む)で、リスクの高い原材料についてデスクトップ調査を実施