CEOメッセージ

2024年10月
代表取締役会長(兼)CEO 髙野由美子

本物へのこだわり、妥協なき強い信念を貫き通し、

感動を創出できるオンリーワン企業として常に「新しい夢」を描き、

使命を全うしていきます。

本物にこだわり、社会に喜ばれるものを創る

 私はこの1年間、「本物にこだわり、社会に喜ばれるものを創る」という強い信念のもと邁進してきました。
 この信念は、会長である私に限ったものではなく、当社グループが40年以上にわたるディズニー社との信頼関係のなかで培ってきたものです。従業員一人ひとりの心には「他とは比べようがない、飛びぬけて秀でたものを提供し、ゲストの皆さまに喜んでいただこう」という強い使命感と誇りがあります。ですから、従業員は当社グループの一番の理解者であると同時に、辛辣な評価者でもあると思っています。従業員から「本当に良い」と評価されなければ、世の中にお出しすることはできません。
 今なお心に残っているのが、私が入社した当時の社長・髙橋政知の「君たちの仕事は本物を創ることだ」という言葉です。髙橋から何度も繰り返し聞き、「本当に質の良いもの、本物にこだわり抜き、社会の皆さまに喜ばれることを大切にしている会社なのだ」と心に深く刻まれました。こうした歴代リーダーたちの本物志向、妥協なき強い信念が脈々と受け継がれてきたからこそ、当社グループは感動を創出できるオンリーワン企業として、今日まで続けてこられたのだと思います。

「ストーリーを伝えることからつながる心の価値」を創造する

 当社グループは、2030年に目指す姿「あなたと社会に、もっとハピネスを。」を定め、その実現に向けて取り組んでいます。
 私は、ハピネスとは、「愛を感じている瞬間・状態」を指すものだと考えています。
 私たちは、良質なストーリーから派生するさまざまな愛の形に影響を受けながら、大人へと成長してきました。テーマパークは、家族、友人、自然、故郷などへの愛をベースにしたストーリーからできています。パークを訪れると、ストーリーを彷彿とさせる何かに出会い、忘れていた感情がよみがえる。そして、ご自身の内側にある愛のひとつの形が発露していく。それはゲストだけではなく、キャストをはじめとする従業員も同様です。それがパークの至るところで起こっており、循環し続けているのです。
 そして、私の考える「ハピネスの循環」は、パークから帰った後も、日々の生活のなかで他者への優しさが自然に芽生え、それが行動喚起となって、ゆくゆくは広く社会全体に対しての関心、例えば環境問題の取り組みなどへと波及していくものです。
 このように「ストーリーを伝えることからつながる心の価値」を創造することこそが、私たちの存在意義であり、この先も私たちの事業が支持され続けるための大きな力になると確信しています。

ブランド価値を高める道筋は、サステナビリティ経営とともにある

 私は、当社グループのブランド価値を高めていく道筋は、サステナビリティ経営の追求にあると考えています。
 当社グループの事業は「素晴らしいもの、ユニークなもの、価値あるものを創って、社会の皆さまに喜んでもらいたい」という想いの実現にあります。これは、サステナビリティ経営の軸となる ESG マテリアリティに通じる考え方です。私自身、ESG マテリアリティを特定する段階から関わっており、これらの取り組みを通じて、社会のなかでどのような存在価値を示していくのかを重要視しています。
 なかでも「人」の力が事業の根幹を成している当社グループにとって、ESG マテリアリティのひとつである「従業員の幸福」は事業活動の前提ともいえる最重要項目だと認識しています。従業員一人ひとりが「働きがい」や「喜び」を感じているからこそ、その気持ちがゲストにも伝わり、波紋のように広がっていく。これこそが、当社グループの価値創造の原動力です。今後も、従業員の「働きがい」と「働きやすさ」が高いレベルで両立する企業、そして社会から求められる企業であることを目標に取り組んでいきます。
 なお、ESG マテリアリティは、長いスパンで継続的に取り組んでいくことが重要であると考えています。例えば、環境分野で選定している「気候変動・自然災害への対応」「循環型社会」についても、屋外でテーマパークを展開する企業として社会と調和していくために、今後も真摯に取り組んでいく所存です。

リーダーとして、新たな時代へのゲートを創っていく

 2024年6月6日、東京ディズニーシーに、開園以来最大規模の開発となる新テーマポート「ファンタジースプリングス」を開業しました。
 ファンタジースプリングスは、私自身がリーダーとして、構想期間を含め約10年間の歳月をかけて取り組んできた一大プロジェクトです。感染症流行下の数年間はプロジェクト進行の是非に関する議論もありましたが、「絶対に成し遂げてみせる」「従業員が誇れるものにする」という信念を貫き通してきました。
 プロジェクトの終盤、足場を外して初めてエリア全体を見渡したとき、あまりの素晴らしい世界に、声にならないほどの感動を覚えたことは今でも忘れません。
 もちろん、これで終わりではなく、ハードを最大限に活用して事業をいかに発展させていくかが大きな課題になります。今後も、「ゲスト目線に徹し、磨き、極めていく」を信条に、ゲストの「次へ生きる活力」へとつないでいけるように努めていきます。
 また、企業としては、「次は何を仕掛けるのかな」と、常に目が離せない期待感を抱かせる存在であり続けたいと思っています。その意味でも、ファンタジースプリングスの開業から1か月後、クルーズ事業への参入を発表できたことを大変嬉しく思います。
 当社は、新規事業について常に模索し続けてきましたが、OLCグループならではのファミリーエンターテイメントクルーズをテーマパーク事業、ホテル事業に次ぐ第3の柱として育て上げ、新たなレジャーの楽しみを世界の皆さまへお届けしたいと考えています。そのためには、やはり「人」の力が欠かせません。従業員一人ひとりの強みや個性を最大限に発揮することで、グループ全体の総合力としてアウトプットを最大化し、さらにパワーあふれる企業にしていきたいと思います。
 世の中では、日々、新たなエンターテイメントが現れては消えていき、社会の皆さまの期待値や求めるものの基準が上がっていきます。それと同時に、私たちが提供する価値も、社会の皆さまの期待に応えることで磨かれ、上がっていかなくてはなりません。
 リーダーの使命とは、従業員の羅針盤となる「新しい夢」を常に描いていくことだと思います。私はリーダーとして、新たな時代へのゲートを創っていきたい。「ディズニーランドは永遠に完成しない」とウォルト・ディズニーが言ったように、私たちの事業にも完成はなく、常に成長し続けていくものなのです。
 株主・投資家をはじめとするステークホルダーの皆さまには、ぜひ長期的な視点で当社グループの成長を見守っていただきたいと思います。
 今後とも一層のご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。

COOメッセージ

2024 年 10 月
代表取締役社長(兼)COO 吉田 謙次

経営資源のポテンシャルを最大限に活用し、

新しい価値を創出していきます。

社会へどのようにハピネスを還元していくのか

 当社グループは、2030年に目指す姿「あなたと社会に、もっとハピネスを。」を掲げています。これは、テーマパークを含むリゾートのみならず、社会を含めた多くの人々のためにハピネスを創造し続け、良い影響を与えられる存在でありたい、という私たちの企業姿勢であり、どのようなハピネスを創造するのかについては、ゲスト、従業員、社会、それぞれによって変わってくるものと考えています。
 ゲストについては、キャストをはじめ従業員のホスピタリティによって、「ここに来てよかったね、楽しかったね、また来たいね」と思っていただけることです。また、従業員については、ゲストの笑顔や「ありがとう」という喜びの声をいただくことによって、自身が担う業務の誇りと活力へとつながっていくことです。
 では、社会に向けたハピネス創造とは何でしょうか。これは「当社グループが、社会に対して、どのようにハピネスを還元していくのか」と言い換えられると思います。当社グループでは、8つのESGマテリアリティのひとつに「子どものハピネス」を定めており、重要なステークホルダーである子どもに関わる社会課題に向き合いながら、子どもを支える取り組みを拡大していくことを目標としています。その大きな一歩として、2024年4月に「オリエンタルランド子どものハピネス財団」の設立を発表しました。本財団を通じて経済的に困窮している子どもたちの夢と希望の実現に向けた支援に取り組み、社会に貢献する人材を育成することで、社会にもハピネスを広げていきたいと考えています。そして、ESGマテリアリティの推進を通じて、持続可能な社会への貢献と長期持続的な成長を両立するサステナビリティ経営を実現していきます。

対話を通じたコミュニケーションが、事業を成長へと導く

 社長就任時、当社グループは感染症流行の影響により、厳しい経営の舵とりを迫られていました。約4か月にわたって休園するなど前代未聞の事態が起こり、当時の全従業員が「この先、本当に大丈夫なのだろうか」と大きな不安を抱えていたと思います。だからこそ、社長としての私の役割は、まずは目先の業績を回復し、従業員に安心してもらうことだという確固たる決意でやってきました。そして、この約3年間で業績は順調に回復し、2023年度はついに過去最高益となりました。
 私はこの業績には、数字以上の価値があると捉えています。それは、「当社グループはもう大丈夫だ。もっとこの事業で頑張れる」と、従業員の気持ちをプラス方向に動かしたことです。そうした面からも非常に大きな成果だったと自負しています。
 人的資本は、事業を成長へと導くための大事な要素のひとつであると思っています。人的資本投資は、一過性のものではなく、まさに将来の財務に反映させるためのものだと考えています。例えば今年度も、準社員を含めた賃金の引き上げを実施しましたが、物価が上昇していくなかで、それを補う処遇の改善は継続していく方針です。従業員にはコア事業の成長に注力できる環境を整え、その結果、増益できた部分をさらに分配・還元していくという発想が大事だと思います。
 なお、2023年度の当社グループの働きがいに関する調査結果は、総合スコア68でした。これを2030年度には71まで上げるのが目標です。調査結果を分析すると、事業への共感や同僚との関係性が良好な一方で、職場の施設環境の改善や上司とのコミュニケーション、成長支援の強化などの課題が見受けられました。私はこの結果を重く受け止めています。特に上司とのコミュニケーション、成長支援の強化については、管理職やマネジメント層が中心になって、「こんな能力があったのか」「この業務であれば、成果を出せるのではないか」と、従業員一人ひとりの潜在能力を掘り出してあげることが大切だと考えます。ひとつの業務にチャレンジして上手くいかなかっただけで「できない」とすべてを諦めてしまうのは非常に残念です。配置転換をすると、水を得た魚のように生き生きと活躍する従業員もいます。
 そのためにも、やはり日々の対話を通じたコミュニケーションは重要であると考えています。私は、従業員との対話促進の場として昨年、管理職からスタートした「社長のKATARIBA(カタリバ)」を一般職まで広げ、38回開催しましたが、話題提起はせず、子育てと仕事の両立や今後の事業展開など、フリースタイルで好きなことを話してもらっています。そうやって個々の抱えている背景や考えを共有し意見交換することが、多様な視点でものを見て、考え、提案できる組織風土の醸成へとつながり、従業員エンゲージメントの向上や、今後の事業成長において非常に重要だと考えています。

本物を追求しながら、活躍のフィールドを「海」へ。新たな成長を描いていく

 当社グループは、2024年6月6日、東京ディズニーシーに新テーマポート、ファンタジースプリングスを開業しました。2001年東京ディズニーシー開園以来最大規模のエリア拡張となる、広さ約14万平方メートル、約3,200億円を投資したファンタジースプリングスは、感染症流行で先行き不透明な時期にはプロジェクト続行の是非を問う声があがるなどの紆余曲折があり、開業そのものが大きなチャレンジでした。
 実際に完成すると、プロジェクトに関わった従業員をはじめ、建設に関わった工事関係者の方の技術力、ディズニー社の創造力を結集し、本物をとことん追求した空間演出に感動しました。また、『アナと雪の女王』『ピーター・パン』『ラプンツェル』のそれぞれの物語によってエリアが完全に区分されており、道を少し歩いてひとつ角を曲がると、景色や植栽が変わっていく面白さがあります。ぜひ、園内を思い思いに歩いて、物語の世界観を味わってほしいと思います。
 今後は、これまでとは違う新たな成長を描いていきます。その大きな第1歩が、今年7月に発表した、日本を拠点とするディズニークルーズの展開です。クルーズ事業は、ファンタジースプリングスが希望の星だったときと同じように、当社グループを新たなステージに導く光のような存在になるものと期待しています。当社グループがクルーズ事業に乗り出すことは、従業員にとっても大きく夢が広がるものと私は思っています。当社グループの強みは、やはり「人」の力です。従業員一人ひとりが持つ高いホスピタリティと、個々の成長も含めてさらにスキルアップしてもらうことが今後の事業成長には欠かせません。それに加えて、ハードをどのように作り、いかに当社グループならではの新しい価値を創出していくのか。これまでとは違う成長の方法を追求していくことも私自身の役割です。そうした意味でも、新たな事業となるディズニークルーズは大きな節目になると思っています。
 また、私たちが有している経営資源のポテンシャルをしっかりと把握していくことも、これまで以上に必要だと思っています。アトラクション施設などのハードはもちろん、培ってきたサービスのノウハウや、オペレーションの仕組みなど、価値を生み出す源泉となる資源はまだまだあるはずです。これらを最大限に活用しながら、さらに新しい仕組みへと進化させていくことで、さらなるゲストの体験価値向上に寄与できると考えます。
 投資家・株主をはじめとするステークホルダーの皆さまには、ぜひ私たちの事業をゲストとしても楽しんでいただき、新しいチャレンジと事業の成長をともに長い目で見守っていただきたいと思います。また、当社グループの考えていることが皆さまの目にはどのように映るのかなど、これまで以上に密な対話を重ね、当社グループの長期的かつ持続的な発展に努めたいと思います。