CEOメッセージ

2023年10月
代表取締役会長(兼)CEO 髙野由美子

「夢・感動・喜び・やすらぎ」を不変の価値として、

当社グループの描く夢が、過去・現在・未来の軸で切れ目なくつながり、

今後も社会へ貢献できますよう、全力で職務を全うしていきます。

 2023年4月、東京ディズニーリゾートは開園40周年を迎えました。これもひとえに、長期にわたり支えてくださっているすべてのステークホルダーの皆さまの厚いご支援の賜物と心より感謝申し上げます。
 この節目の年において、代表取締役会長(兼)CEOを拝命することとなりました。歴代の経営陣や諸先輩方が築き上げてきた歴史や経営を継承するという役割に大きな責任を感じております。当社グループへ寄せられる期待や事業への愛情をしっかりと受け止め、経営の進化に邁進する所存です。 
 私は東京ディズニーランドが開園する3年前の1980年に当社へ入社しました。ディズニーランド誘致のビジョンに共感し、日本版ディズニーランドの立ち上げに何としても加わりたいと思ったのが発端でした。以来、理念とする「夢・感動・喜び・やすらぎ」を不変の価値として、東京ディズニーリゾートの発展に取り組んでまいりました。当社グループの描く夢が、過去・現在・未来の軸で切れ目なくつながり、今後も社会へ貢献できますよう、全力で職務を全うする覚悟でおります。
 当社は、OLCグループが2030年に目指す姿を「あなたと社会に、もっとハピネスを。」と定め、中でも「従業員が心から誇れる企業であり続けること」を念頭に、社会のより良い未来を見据えた変革を現在進めております。
 私たちの目指すサステナビリティ経営とは、長期持続的な成長と持続可能な社会への貢献を両立させていくものであり、「人」の力を何よりも大切に考えております。この事業に参加することに幸せや喜びを感じる人、人に喜んでもらうことに喜びを感じる人の存在がとても重要です。なぜなら、サステナビリティ経営とは1社だけ、企業だけではできず、周りから受け入れられ、周りと協力しながら循環を促し、地球や他者への愛があってこそ成り立つからです。
 ディズニーテーマパークは、「ストーリーを伝える」という核心的な価値に基づいています。家族、友人、子どもや動物たち、それらを取り巻く環境や自然への愛がベースとなっています。愛を無意識に感じるからこそ、どこか懐かしく、温かく、愛おしい気持ちになる。その積み重ねが感動につながっていく。その感情の動きに共鳴してくれるのがまさにキャストです。提供価値は最終的にキャストからゲストに伝わりますから、キャスト自身が幸せでないと周りに喜びの種をまくことはできません。
 当社グループでは、「従業員の幸福」を含む8つのESGマテリアリティを設定し、事業の持続的発展を補完・強化する取り組みを推進しています。
 私自身、2023年6月まで経営戦略本部長としてESGマテリアリティに関わる戦略を統括しておりましたが、経営層や多くの従業員との議論を通して、「サステナビリティ」や「ESGの視点」が従業員に刻まれ社内に広がり始めているのを実感しております。
 2024年6月6日には、東京ディズニーシー開園以来最大規模の開発となる「ファンタジースプリングス」がオープンいたします。この新テーマポートには、幅広い世代に愛されているディズニー映画「アナと雪の女王」「ピーター・パン」「塔の上のラプンツェル」の世界が再現され、最上級ランクの客室を有するパーク一体型ホテル「東京ディズニーシー・ファンタジー・スプリングスホテル」が加わり、世界中でオンリーワンの夢のひとときをお届けできるものと確信いたします。
 2027年には、東京ディズニーランドでは開園以来親しまれてきた「スペース・マウンテン」とその周辺エリアを一新し、斬新でユニークなトゥモローランドの世界観をお楽しみいただけます。
 その後も途切れることなく、アトラクションやエンターテイメントなど新たな感動を創出し、ブランド価値を高めていくとともに、さまざまなビジネスの可能性にも挑戦してまいりますので、どうぞご期待ください。
 皆さまにおかれましては、ぜひ長期的な視点で見守っていただき、一層のご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。

COOメッセージ

2023年10月
代表取締役社長(兼)COO 吉田 謙次

事業の原動力となり、未来を切り拓いていくのは「人の力」

 社長に就任してから2年が経過しました。前例のない感染症流行のもと、難しい経営の舵とりを迫られた2年間でした。キャストをはじめ従業員は、多くの制限がある中で自身ができることは何かを考え、創意工夫しながら、ゲストにハピネスを提供できるように全力で対応し、この危機を乗り切ることができました。
 私は、当社グループの事業の原動力となり、未来を切り拓いていくのはやはり「人の力」であると強く認識すると同時に、「人と人との触れ合い」を大切にし、こころの産業として事業活動をしてきた当社グループの存在意義そのものについて、深く考えさせられました。また、感染症流行による長期の休園リスクなど、これまでの集客に依存した事業構造の課題を痛感しました。
 こうした経験を踏まえ、当社グループは2022年4月に長期的な成長の方向性として、2030年に目指す姿「あなたと社会に、もっとハピネスを。」を掲げ、8つのESGマテリアリティを特定しました。また、2024中期経営計画を策定し、「新型コロナウイルス感染症の流行による影響からの回復と将来に向けたチャレンジ」を方針に掲げ、財務数値の回復を目指してきました。
 2024中期経営計画は、業績が急激に回復し、将来に向けたチャレンジという点においては良い一歩を踏み出せたと評価しています。
 2023年度も引き続き各施策を着実に進めるとともに園内における需要の集中など体験価値への影響を検証しつつ、体験価値向上に向けた取り組みを適宜検討していきます。

社会への価値提供の追求が、将来の財務指標の向上につながる

 ESG担当部門中心であった推進体制も変化し、事業部門の役員をリーダーとするESGマテリアリティの取り組みが広がるなど、実行フェーズへと移行していることもあり、ESGやサステナビリティの考え方が経営に組み込まれ、徐々に社内に浸透し始めていることを実感しています。
 経営会議や取締役会においても、ESGに関する議論がなされるようになり、私が議長を務めるサステナビリティ推進会議でも、従業員や環境に関わる課題について、社会状況、ゲストの状況なども踏まえ、賛否含めて闊達な議論を交わしました。
 人権、多様性の尊重については、当社グループ事業の基盤と捉えており、このようにこれからも議論を重ねながら、互いの違いを認め合い、変化に対して柔軟に対応できる組織体制を強化していきたいと思います。
 また、私自身はフード本部出身ということもあり、レストランにおける使い捨てプラスチックの削減や食品ロスについて日頃から敏感なのですが、パーク内のレストランでは、ストローが無くなりストローレスリッドに、一部の店舗でビールの紙コップはアルミ製へと徐々に変更するなど、省資源化・資源の有効活用の取り組みも着実に進捗しています。
 私は、「非財務とは、将来財務である」と思っています。ESGマテリアリティを通じた社会への価値提供を追求していくことは、当社グループの将来の財務指標につながる重要なことだと認識しています。なぜなら、事業活動を継続するためには、社会や環境との関係性は当然必要ですし、キャストをはじめとする従業員は社会の一員でありゲストでもあるからです。
 人と人との信頼関係のように、我々はESGやサステナビリティの歩みを一歩ずつ進めていくことを通じて、社会やステークホルダーとの信頼関係を高めていく。それが将来財務の礎を築くものだと考えています。

「対話」が人を育て、大きな「組織力」となる

 当社グループにとって、人的資本は事業の根幹であり、利益の源泉です。元来、当社グループには、先輩は後輩を育て、後輩は先輩を慕い、自律的に育つように背中を押す文化がありました。感染症流行を経て、改めて人と人との関係の重要性が見直される中、この文化を、私たちのDNAとして再び活性化させていきたいと強く思っています。
 いわゆる「プライドをもって仕事ができる」というのは、言い換えれば「仕事を通じて、成長していることを実感できる」ことだと思います。そういった意味でも、2024中期経営計画の人事施策で掲げている「一歩踏み出す、背中を押す」は非常に大切だと思います。私はこの1年間、従業員が「自ら一歩を踏み出す」こと、会社・マネジメントはその「一歩」を引き出し支援する姿勢(背中を押す)が大切であることを、かなり積極的に発信してきました。
 では、具体的にどうするのか。私は、従業員の育成や成長を促す仕組みをつくることも大切ですが、最終的にはやはり「対話」が重要だと思います。この1年で対話の再開が社内外の至るところで始まっていますが、現時点では、コミュニケーションの歯車を再び回し始めた段階です。まだ時間はかかると思いますが、いったんコミュニケーションの歯車が回り始めれば、簡単には止められない大きな「組織力」へとつながると確信しています。
 私自身も、この1年間は、マネジメント同士が働きがいや組織のありたい姿について語り合う「対話」の場として「KATARIBA(カタリバ)」を約20回開催し、まずは管理職レベルから対話することを意識してきました。ここでは、特にテーマは決めず、2024中期経営計画についての意見や、社長になった経緯など、さまざまな雑談をしています。自分の考えも及ばないような多様な考え方が聞けたり、それに耳を傾けたり、本当に気づきが多い充実した時間で、あっという間に時間が過ぎてしまいます。今後は一般職の社員へも対話の場を広げていきたいと思っています。

これまでとは違う成長の方法を追求していく

 東京ディズニーリゾートが開園40周年を迎えることができ、過去3年間の苦しかった時期をようやくようやく乗り越えられたと実感しました。
 園内でゲストの笑顔を見かけるとやはり、私たちが生み出す場は生活に不可欠だと実感します。「絶えることのない人間賛歌の聞こえる広場をめざして」。これは当社が舞浜の土地計画策定時に、全役職員で共有した事業に対する想いです。老若男女、国籍、生活など問わず、人と人が触れ合い、ともに喜び、笑い、感動し、その声が響き渡る。まさに「人間相互理解の文化」の形成であり、そのすばらしい世界を実現し、提供し続けることが当社事業に課せられた使命です。まさにそのような、当社グループの存在意義ともいえることを再認識させられた3年間でした。
 今後、次の50年、100年に向けて、当社グループが持続的に成長していくうえで、社長としての私の役割とは、新規事業を含めてこれまでと違った当社グループの成長の方法を追求していくことです。そのためにも、足元の状況にしっかり対応しつつ、長期目線で経営を考えていく。この両輪を回していくことが、結果的に従業員の幸福につながり、ハピネスの創造となり、社会への貢献につながっていく―このことを信条として、職務に邁進したいと思います。
 投資家・株主をはじめ、多くのステークホルダーの皆さまのご期待を超えるような企業として成長すべく、今後もしっかり対話を重ねながら、事業の持続的発展に努めたいと思います。今後ともステークホルダーの皆さまの一層のご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。